Answer

80gのてんさい糖は、
はちみつ70gから試す

今回の配合なら、最初の一台は「はちみつ70g、生クリーム90ml」がおすすめです。

60gでも焼けますが、元のケーキより甘さははっきり弱くなります。反対に80gをそのまま入れると、はちみつの香りが強くなり、液体も増えます。

Water

はちみつ70gのうち、
約12gは水

含水率

食材の中に、どれくらい水が入っているかを表す言葉。

てんさい糖の主成分はショ糖で、ほぼ乾いた結晶です。はちみつは平均すると、果糖約38%、ブドウ糖約30%、水約17%でできています。

角砂糖を一つ入れるのと、甘いシロップを一さじ入れるのでは、カップの中に増える水が違う。それと同じことが、ケーキの中でも起きます。

70g×約17%=約12gの水

そこで生クリームを10ml減らします。はちみつから入る水を、別の液体から少し引いて戻す考え方です。

12mlきっちり減らさないのは、はちみつの水分量が商品によって異なり、家庭用オーブンの蒸発量にも差があるから。料理では、計算の精密さより再現しやすい数字が役に立ちます。

Sweetness

「はちみつは必ず1.3倍甘い」
では説明できない

果糖

はちみつに多く含まれ、ショ糖より強く甘さを感じやすい糖。

国際連合食糧農業機関の資料では、果糖の甘さは基準となるショ糖の約1.4倍、ブドウ糖は約0.7〜0.8倍とされています。はちみつには、その両方が入っています。

強い声の人と静かな声の人が、同じ部屋で一緒に話しているようなもの。

果糖だけを見れば甘い。けれど、はちみつ全体の甘さは、ブドウ糖の割合、花の種類、香り、食べる料理によって変わります。

2025年の官能評価研究では、はちみつの甘さは食品によって変わり、同じ重量の砂糖より弱く感じられた食品もありました。だから「砂糖の75%」は万能な式ではありません。

それでも今回は70g。甘さだけでなく、香り、水分、焼き色まで含めて扱いやすくするためです。

Browning

表面だけ先に黒くなる理由

メイラード反応

糖と卵や乳製品の成分が熱で出会い、茶色い色と香ばしさを作る反応。

はちみつの果糖とブドウ糖は、この反応に参加しやすい糖です。てんさい糖の主成分であるショ糖は、そのままでは参加しにくい性質を持ちます。

ただし、濃い焼き色をすべてメイラード反応だけでは説明できません。高温では糖そのものが変化する褐色化も重なります。

Setting

「はちみつを入れると固まらない」
は言いすぎ

凝固

卵のたんぱく質が熱でつながり、生地を支える変化。生卵がフライパンで固まる、あの変化です。

はちみつから水が加わると、中心はやわらかい方向へ動きます。ところが、80gの砂糖を70gのはちみつに替えると、乾いた糖の総量は減ります。糖が減れば、卵が固まりやすい方向にも動きます。

二つの力が綱引きをしています。焼き上がりを決めるのは、はちみつだけでなく、卵の量、中心温度、型の大きさ、オーブンの癖です。

Recipe

はちみつの
バスクチーズケーキ

最初の一台のための、試作基準。

材料

クリームチーズ
200g
1個
はちみつ
70g
薄力粉
大さじ1
生クリーム
90ml

最初はアカシアなど、比較的穏やかな風味のはちみつが使いやすいでしょう。

作り方

  1. 01

    クリームチーズを室温に戻し、へらでなめらかにする。オーブンは220℃に予熱する。

  2. 02

    はちみつを2回に分け、ボウルの底と側面をこすりながら混ぜる。

  3. 03

    溶いた卵を2〜3回に分けて混ぜる。薄力粉を加え、粉が見えなくなったら生クリームを混ぜる。

  4. 04

    型に流し、220℃で25〜30分焼く。18分を過ぎたら表面の色を見る。

  5. 05

    好みの色になったら、必要に応じてアルミホイルをふんわりかぶせる。色が薄ければ最後の2〜3分だけ230℃へ。

  6. 06

    粗熱を取り、2時間以内に冷蔵庫へ。6時間以上、できれば一晩冷やす。

Three cautions

工程で気をつけるのは、三つ

混ぜる

冷たいチーズへ一気に入れない

先にクリームチーズをやわらかくし、はちみつを2回に分けます。

焼く

時計より、18分後の色を見る

元の230℃・30分をそのまま使わず、220℃から始めて表面を観察します。

足さない

今回は重曹を加えない

膨らませる菓子ではなく、重曹は味と焼き色も変えるためです。

Adjust

60g、70g、80gで迷ったら

控えめ60〜65g

チーズの酸味を前へ。生クリーム90ml。

しっかり75〜80g

甘さと香りを強く。生クリーム85〜90ml。

最初の一台で正解を当てるより、使った商品名と量をメモする。次の一台は、その記録から5gだけ動かす。

ケーキ作りは、勘ではなく小さな実験になります。

References

参考資料

  1. シェフ三國「#481 バスクチーズケーキ」
  2. 米国農務省 Agricultural Research Service「HONEY」
  3. 国際連合食糧農業機関「Dietary carbohydrate composition」
  4. Quantifying the sweetness intensity and impact of aroma in honey from four floral sources
  5. A spoonful of sweetener helps the bitter food go down
  6. University of California Cooperative Extension「Baking with Honey」
  7. 米国食品医薬品局「What You Need to Know About Egg Safety」
  8. 厚生労働省「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。」

本サイトの70gは、成分値と製菓上の一般則から組み立てた家庭向けの試作基準です。この配合そのものを比較試験した結果ではありません。はちみつの種類、型、オーブンによって調整してください。